« 2007年04月 | メイン | 2007年06月 »

2007年05月30日

コメント機能を有効に

コメントを付けようとすると、basic認証になってしまう不具合を修正しました。
もし、いままでコメントいただいていたら、すみませんでした。

ykuni

2007年05月28日

人力飛行機制作集団Coolthrust 「人力飛行機の試験飛行における安全対策について」 〜実例紹介を通じて(その5)

2005年のスカイスポーツシンポジウムでの発表原稿を元に、ブラッシュアップしたものです。

「テストフライトの問題事例」編(第3回)

第3部「セッティング不良編」

機体のセットアップのミス事例です。
過大な滑りの発生 → 滑走路からの逸脱
(原因)上反角不足
(調整)ワイア長の見直し

 飛行中、過大な滑りが発生した事例です。このフライトは、左前から1〜2m/s程度の風が入っています。 当初は安定したフライトを見せていますが、風にあおられたあと、姿勢が崩れ、大きな高度損失を伴う滑りを示します。 このような特性は、安定性不足と考えます。当チームの機体はフライングワイア方式でたわみ形状を変更できるので、ワイア長をのばし、上反角をつけ直しています。第4段階での出来事です。

ニュートラル位置の不良 → 機体の異常姿勢

(原因)センサーのヒステリシス及び確認不足
(対策)毎飛行毎に点検・テレメトリによるリアルタイムのモニター

 大きく頭上げで飛んでいますが、水平尾翼をみると異常なトリムとなっていることが分かると思います。このような姿勢は、すぐさま失速に陥る危険性、空力中心の前進による安定性の低下などの問題を起こす可能性があり、避けるべきです。第3段階のものです。

(長らくおつきあいありがとうございました。次回最終回、「テストフライトの問題事例」 第4部「気象の要素編」を2007/06/04に掲載予定です。)

ykuni

2007年05月21日

人力飛行機制作集団Coolthrust 「人力飛行機の試験飛行における安全対策について」 〜実例紹介を通じて(その4)

2005年のスカイスポーツシンポジウムでの発表原稿を元に、ブラッシュアップしたものです。

「テストフライトの問題事例」編(第2回)

第2部「製造不良編」

製造時の不具合、有り体に言って、「製作ミス」による問題事例です。
主翼の揚力差の発生
(原因)リブ単位での迎角不良
(対策)製作時チェック方法の見直し

 主翼のリブ取り付けに問題があり、中心から右の2番目の翼部品(2.5m〜6.5mの4m)が1度以上ねじれていたため、左右揚力バランスが大きく崩れていた事例です。第1段階の滑走試験で発見されています。

主桁接合部の接着不良

(原因)パイプ桁の断面変形による剥離
(対策)リブの増設による断面形状確保

 接続部分の桁の外周にアルミのリングを被せ、接着していますが、これがはがれたものです。 組み立て中に部品の接着はがれが見つかったもので、飛行中大きな力が作用する部分であり、意図せず滑りが生じてガタを生じる可能性があったため、当日はテストフライトを中止しています。第3段階で発見されています。

(次回、「テストフライトの問題事例」第3部「セッティング不良編」2007/05/28に掲載予定です。)

ykuni

2007年05月14日

人力飛行機制作集団Coolthrust 「人力飛行機の試験飛行における安全対策について」 〜実例紹介を通じて(その3)

2005年のスカイスポーツシンポジウムでの発表原稿を元に、ブラッシュアップしたものです。

今回から、実際に試験飛行で経験した問題事例を紹介します。ここからがお楽しみです。今だから言えますけど。

「テストフライトの問題事例」編(第1回)

第1部「設計不良編」

設計時に検証を加えることで、防止することができたであろう問題事例を集めました。
より高度な対策(メーカーでは当たり前のことですが)としては、故障モードおよび影響解析(FMEA)や、故障木解析(FTA)を行うことが考えられますが、正直なかなか手が回りません。
これらについても説明したいと思っていますが...気分が乗るまでお待ち下さい。

不十分な操縦性(CT1)低い応答性
(原因1)テールブームの剛性不足
(原因2)主翼のT曲げ剛性不足
(対策)(CT2)それぞれの剛性の向上 ・テールブーム径を10%増、積層構成見直し ・リアスパー径20%増、主桁との距離確保等

 この映像からもテールブームの曲げ・ねじり剛性がともに不足していることが分かります。 また、主翼の前後曲げ剛性も低く、主翼の変形によりヨー発生の遅れを生じていたと考えています。 これらについてテストフライト時に十分な検証をできておらず、結果として琵琶湖でのフライトの状況に陥ったと考えています。これを反省材料とし、CT2では、操縦性の大幅な改良を行い、特性が改善していることをテストフライトで確認しています(次の動画を参照)。

操縦桿の強度不足

 操縦桿の軸強度が不足のため使用中にもげた、という事例です。クールスラストの機体は、操縦系統にフライバイワイア方式を採用していますが、フライバイワイア方式をとると、操縦桿の操作量を計るセンサーを組み込むことが必要になりますが、センサーの組み込み場所を確保するため強度が不十分になったものです。

操縦系統の誤動作

(原因)発泡スチロールの静電気
(対策)機体アースの充実

 操縦系統単体での動作は正常であるにもかかわらず、機体搭載時に誤作動が起こることがありました。これは、パイロットを覆う発泡樹脂製のフェアリングがすれる際に静電気を蓄積し、電気回路に悪影響を与えた可能性があります。

操縦不能
(原因)電池残量不足
(対策)残量警報の実装

 映像は当日初回の滑走試験で、これは操縦系統の電池切れでした。替えの電池を用意しておらず、この日のテストフライトはこれで終了としました。出発前の確認不足の問題でもありますが、テストフライト自体は第3段階に入っており、これが飛行中に発生した場合を考えると、大変重大な問題です。その後の再発防止策として、機体計器に電池残量警報を実装しました。

(次回、「テストフライトの問題事例」 第2部「製造不良編」を2007/5/21に掲載予定です。)

ykuni

2007年05月07日

人力飛行機制作集団Coolthrust 「人力飛行機の試験飛行における安全対策について」 〜実例紹介を通じて(その2)

2005年のスカイスポーツシンポジウムでの発表原稿を元に、ブラッシュアップしたものです。

「テストフライトの計画」編

第3部「墜落の危険を回避するには」

 墜落の危険を回避し、琵琶湖での安全性を確保するためには、テストフライトを行い飛行特性を把握し、機体の信頼性の向上及びパイロットの機体の理解を深めさせることが必須です。

 しかし、テストフライト自体に危険な部分があります。テストフライトは、プロジェクト全体の計画にきちんと位置づけるとともに、それ自体Step By Stepに段階を踏んで行うことが安全確保に重要です。

3.1 二つのテストフライトのスケジュール

 安全にフライトを行うには、ムリのない計画を立てることが重要です。スケジュールを考える上で、大きく二つのスケジュールがあります。

シーズンスケジュール

機体の操縦性・安全性を確保するためのテストフライトと、機体製作を両立する日程を確保することが必要。
 当チームのテストフライトには少なくとも3ヶ月程度の期間を充てる必要があると考えています。これは、当チームが土日しか作業を行えない事情および天候により試験を実施できないことを踏まえ、テストフライトの準備=実施=調整のサイクルを考えた結果です。この期間中に5〜6回のフライトを行うことを想定しています。

当日のスケジュール

10人近く(以上)の人間が、前日の準備から丸一日以上、連続して作業するので、お互いの状況をよく共有することが必要。適宜休憩をとり、時には試験自体を中断・中止しなければならない。
 また、当日のスケジュールも、綿密に考えておく必要があります。 10人近く(以上)の人間が、前日の準備から丸一日以上、連続して作業するので、お互いの状況をよく共有することが必要です。 ここの準備の度合いで、当日の成果が変わってきます。

3.2 テストフライトのStep

 シーズンスケジュールでは、自分たちの飛行機をどのように仕上げるのかについて戦略を練る必要があります。クールスラストでは、テストフライトを進めるに当たって4つの段階に分けて考えています。

第1段階 地上滑走 「機体の取り扱いになれること」を目的とした試験を行います。
 機体が滑走できる能力があるか、グランドクルーが機体をきちんと支えられるか、メンバー間の連絡が確実に行うことができるか等、確認します。この段階は製作とのかねあいで準備不足になりがちですが、パイロットも地上クルーも慣れていないことに留意して、十分な準備が必要です。
第2段階 ジャンプ飛行 「機体の各部が正しく機能し、重心やトリムなど最低限の調整がとれていることの確認」を目的としています。
 飛行荷重に耐えられることの確認でもあります。 さらに、グランドクルーが、飛行する機体を確実にサポートできるための練習でもあります。滑走に比べだいぶ高速になります。
第3段階 着陸練習(100〜200m程度の飛行)
「パイロットが機体を操作し、目標の位置に着陸できるための練習」の段階です。パイロットに機体を操作させることが重要です。
 この段階で、主翼の上半角や取り付け角、機体の縦・横の安定の調整ができます。 距離が伸びるので、地上クルーの動きが変わります。特にクルーの交代を意識します。
第4段階 飛行練習(滑走路長の飛行)
 第4段階で初めて、本来目的であるパイロットの練習や、機体の性能確認のための飛行試験の実施を行います。巡航のための機体の微調整、エレベーター・トリムやプロペラ・ピッチの調整などは、この段階で行っています。

 このように、CTでは本来の機体の調整を行う第4段階以前に、安全確保のための3段階のStepを設けています。また、段階ごと、機体の性能を十分考慮し、どのような飛行を行うのか予め計画し、メンバーに周知しておくことが重要です。

3.3 テストフライトで行っている運用面の対策

 設計、製造で万全を尽くしても、テストフライトで事故があっては元も子もありません。しかしながら人間がチームワークをもって取り組む必要があるため、難しい部分があります。 多くの場合、テストフライトで問題が生じるときは疲労やタイムプレッシャーの存在があります。クールスラストにおいても、ケガや機体の損傷はテストフライト後半で発生しています。前日から準備をしている場合がほとんどのテストフライトでは、終了間際には疲労が蓄積していることが多いので、十分注意してください。 随時休憩をとり、水や食べ物(飴などもよい)を摂らせること、声を掛け合うこと、担当の交替を決めておくこと等が有効です。

 運用の効率を向上するには、チェックリスト等の活用が有効です。

  • 持ち物チェックリスト
  • 組み立てチェックリスト
  • セッティングチェックリスト
  • Before Takeoffチェックリスト 等々

 クールスラストでは、さらに時間管理担当者をおいて、作業進捗をモニターしています。状況に応じ、当日のスケジュールを修正するための客観的な意見を得るためです。

第4部「最後に」

 テストフライトは鳥コンでの安全確保のために重要であることを述べてきました。自分たちの作った飛行機をみることができるテストフライトは楽しいものです。しかしながら、飛行するということは、危険なことであることを忘れてはいけません。いつ想定外のことが起こるかは分かりません。 そして、判断に迷ったとき安全を優先することは、メンバーも機体も同時に守ることです。まずは一息ついてから周りをみて、次のことを考える余裕を持ちましょう。

(次回から具体的失敗例についての「テストフライトの問題事例」編に入ります。 第1部「設計不良編」を2007/5/14に掲載予定です。)

ykuni