第29回鳥人間コンテスト(2005)の報告

2005年7月17日(日):ついにこのときを迎えたCT-2.2。4年の歳月をかけた機体が琵琶湖の空へ飛び立つ。プラットホーム上で直前準備を行うメンバーたち。
●パイロット・田中宗介からのフライトレポート
プラットホーム上で国竹さんに無線でフライトプランの最終確認、 「真正面に離陸後、多景島方面に西進し、途中で北寄りに進路を取って竹生島方面を目指すと言うルートでいいですね?」 「いいよ、その通り」
インタビュー後、機体に搭乗し、ペラを低回転で回してPDAの各種表示を確認。また、尾翼も操作し確認。 審判長の持つ赤旗が下げられ、白旗が揚がる。
ゲート オープン! 「いきまぁーす 3 2 1 スタート!」の声とともに滑走開始。
ペダルの回転数は90rpmくらい。機体は真っ直ぐにプラットホーム先端に向かっていき、あっと言う間に湖上に出た。ほとんど高度損失もなく滑り出たようで、機速と回転数を定常飛行用(7.5m/s、85rpm)に合わせた(つもり)。"ほどほどの負荷かな" 楽ではない、トレーニングと同じ程度、 "220wくらいか" もう少し低負荷ならありがたいが、この程度でもしばらく飛んでいけるだろうといった感じで焦りはなかった。視界が悪いために、目標物となるのはかすかに見える多景島だけだった。予定通り多景島を目指して飛び始めたが、風で左右に振られ、すぐに予定進路から外れそうになった。
その風は益々強まってきたので、島との中間付近(離陸してから3km地点) で予定より早めに北に針路変更した。彦根では北寄りの風だったので北に進路をとれば少しは楽になるかと思っていたが、沖合は全般に東風のようで、針路変更してからはずっと機体右側(東側)からの横風となった。ここからはひたすら風との闘いとなった。最短経路で距離を伸ばすため北進を続けようとしたが、飲み物を飲もうとチューブを探り、一口二口水分を摂っている間に、機首が45度くらい風に流されることもあった。とにかく"ラダー右、ラダー右"の繰り返し… 時にはきりすぎて右側に機体がロールして、国竹さんから左にラダーを切れと指示されたこともあったが、すぐに横風に戻されるだろうと右へのロールとボートの指示は無視した(ごめんなさい)。そして悲しいかな案の定ロールを打ち消すような横風が吹き続けた。視界が悪く、風で機体が西に流されても分かりにくいので、とにかくPDAに表示されるGPSの画面と機速・回転数を見ながらの計器飛行となった。多景島が視界から消えてからは外は灰色の空と湖面、互いの境目もわからないほどであった。多景島方向から北に針路変更したころ、クーリングジャケットの氷が頑張りすぎているらしく右わき腹が少々痛んだが、その 10数分後には暑さに苦しめられ始めた。
飛行時間30分くらいだろうか、姉川河口近くまで北上してきた。ここからは背風気味になるのを覚悟で北西に進路を取らねば竹生島方面へ記録を伸ばすのは不可能だと思い、ここで一気に風任せに背風で短時間のうちに勝負をつける(Meisterの記録を抜く)か、少しでも風を横気味にして誤魔化しつつ粘るか。迷った末、後者を選んだ(府大の飛行経路が前者ではないかと思う)。出来るだけ東よりに進路をとり、ゆっくり北上した。対気速度は7.5m/s前後を維持していたが、横風に食われて対地速度は6m/sくらいしか出ていなかったと思われる。機首は北を向いているのだが、GPSの表示する機体の進行方向は常に北西だった。ずっと横滑りしているらしい。ラダーを右に切って機首が少し右を向くと若干負荷が軽くなり、しばらくすると自然と機首は左に振られ、辛くなってまた機首を右へ向けるといった繰り返しだった。ラダーを切ったほうが楽に感じる程であった。フェアリング内に入ってくる風も専ら右より(東から)の風だった。座りなおそうと背中を触った時、背中の氷が全部融けていることに気が付いた。普段のトレーニングで1時間使える量の氷にしたにも関わらず 30分で融け切ってしまった。
その後徐々に高度が下がりエレベータをアップにし始めた頃、ボートから飛行距離11kmと声がかかった。PDAに表示されている飛行距離が 12kmを越えた頃にはかなり辛くなっていたが、後輩にギリギリ勝って着水したらいやらしいと思って、最低でもあと1kmは頑張ろうと自分に言い聞かせた。高度も低く、3m以下となり蒸し風呂状態のフェアリング内の不快指数も急上昇中。もはやお役御免となったクーリングジャケットの前のファスナーを下まで下ろし、少しでも外気を体に当てつつ、目の前にかすかに見えてきた竹生島を目指した。
が、いよいよ最期の時が近づいてきたのか、エレベータをアップに切ろうとしても、操縦桿はこれ以上動かなかった。あとは回転数で機速を維持するしかなかった。このころ回転数78〜80rpm、機速7.0m/sにまで落ちていたと思う。しかし、12kmの次は15kmを目標にした。2年前に府大が作った歴代5位の記録がそれだった。これを上回れば、大会史にCoolThrustの名前が残せる!"チームとして結果を残す"この大命題にはぴったり。そしてPDAに表示される飛行距離が15kmを越えたころ、ボートからの無線がにわかに騒がしくなってきたことでぼちぼち折り返し地点らしいことがわかった。ただ、目の前の表示がまだ15kmほどなのでもう少し飛んでからだろうと思っていた。真正面には竹生島の濃い緑と切り立った崖が見えてきた。見たことのない奥琵琶湖の風景だった。そのとき突然「左翼!左翼!上げろ!」と声がかかった。見ると左翼前方にブイが浮いていた。"上げろと言われてもいっぱいいっぱいなんやけどなぁ"と思いながらも出来るだけ回転数を上げ、祈るように左翼を見ながらブイをやりすごした。島に近づきすぎているためかこの直前には右翼側にもブイがあった。
そしていよいよ折り返しを始める。北東風が強いために左旋回したらそのまま西に流されそうだったので、右旋回で一度機体を風に正対させてから折り返そうと思った。ラダーを右へ2,3度切る。機首が右を向き、真正面の竹生島が機体の左側になった。"島に突っ込むことはなさそう" そのとき目の前を大量の黒い物体が横切っていった。島に棲むカワウ。そして、伴走するボートから大きなホーンが鳴り響いた。それまで高度も体力も余裕はないし、半信半疑で右旋回を始めていたが、このホーンで一気にモチベーションが上がった。さらにラダーを右にきる。すると高度が下がり、機首が湖面に突っ込むように機速が上がって少し旋回した。機速が上がったところで回転数も上げ、少し高度を回復してまたラダーを切る。そして高度を落としながら右旋回・・・これを繰り返し・・・ていたつもりだった(実際は左回りでしたが) 。対岸など島以外の目標物がはっきり見えないほど視界が悪かったため、島のほうへ引き寄せられているとは全く気づかなかった。そして、何度か高度を上げ下げしながら竹生島沿いに飛んでいたが、いよいよ辛くなってきた。高度計は常に0m(1m以下は0と表示されていた)を示し、後輪を水面に擦ることさえあった。ボートからの無線の声が叫びのようになり、僕のふくらはぎも悲鳴をあげだした。水を飲む余裕もなく、左足がつりかけ、ひたすら水面を睨みながら漕いだ...
そしてついに前輪が水を切り、フェアリングから水しぶきがあがった。












